上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
PCの廃棄熱に負けずに28℃を維持しようと奮闘する冷房の空気にいい加減絶えかねた俺は昼下がりの公園に足を向けた。
例の小説を持って。
わざわざ真夏の太陽に照らされようと言うのに読書はないんじゃないかと自分でも思うのだが、そこは習性みたいなものだと思ってほしい。昼下がりに生ぬるい風を受けて木陰で読書ってのもなかなか気持ちがよかったりするのだ。

平日の午後ということもあってか、わりと大きな湖とそれなりに広い施設を持つ近所の公園にはサッカーをする大学生の集団以外には夏休み真っ盛りの小学生が釣竿を持って自転車にまたがる姿しか見当たらなかった。日当たりを避けるために目をつけていた屋根付きのベンチはどれも空いていた。
俺は早速わりと人気の無い一角のベンチに腰を下ろし、コンビニで調達してきたペットボトルの清涼飲料水片手に本に目を通し始めた。決して涼しくはないが人工的な風に比べればはるかに心地良い風を感じながら、俺は小説に没頭した。


座り心地のよろしくない公園のベンチに姿勢をころころ変えることで抵抗しながら本を読むこと1時間と数十分。そろそろ中盤に差し掛かり栞を挟もうかといったところで、目の前に白い影がよぎった。
後悔先に立たず。後から考えると見なければよかったなどと勝手なことを考えたりできるのだが、本に熱中するにも限度があり、そろそろ気疲れしていたころだったので否が応にも目が行ってしまった。

白いおじいちゃんだった。

ご本人の尊厳のためにも念のため注釈しておくが、どこにでもいそうなおじいちゃんだったのだ。白い袖なしランニングシャツに白いももひき、麦藁帽子をかぶってピンク色の自転車にまたがったおじいちゃん。それだけだけなら別に何ということも無く、ちょっと目を引く格好の人がいるなと思っただけで視線を文面に落として終わりだったのだ。
そう、そのおじいちゃんが俺の目の前で服を脱ぎださなければ!


さすがにちょっと驚いた。上半身裸になったおじいちゃんを気が付かれない程度に視界に収めて観察していたが、何のことはない。俺の目の前に鎮座している公園の水道を見れば何がしたいかは一目瞭然である。まぁ、暑いしね。
腰を屈めて水浴びをするおじいちゃんの背中を見ながら、ペットボトルに手を伸ばした俺の顔は傍から見たら軽い仏頂面だったに違いない。

昼下がりの公園のまったりした空気をぶち壊されてしまった俺は(おじいちゃんに悪気がないのもおじいちゃんが悪いというわけでもないのもわかっているが)止めようとしていた読書を再開した。
なんとなくその場を離れるのは躊躇われたから仕方無い。人が来たとたんに席を立つっていうのも少し気分が悪いじゃないか。

まぁ、ここで席を立っても別に良かったんじゃないかと後からなら考えたりできるのだが、そのときはそう考えてしまったのだ。後悔先に立たずその2、である。

水浴びを終えたおじいちゃんが次に何をしだしたかと言えば、俺の座っているベンチの隣のベンチに座ってなんだかご老人らしくない週刊誌的な装丁の雑誌を読み出していた。


さて、俺が日記を書き始めたのはこの時点からだ。さすがにちょっと気になってきたのでおじいちゃんの観察日記を携帯でつづり始めた。ちなみに、ここまで書き上げた時点でおじいちゃん、終始無言である。今気付いた。堰のひとつもしなかったんじゃないだろうか。独り言をぶつくさ言われるのも気になるが、無言だろうと気になるのは一緒だった。
まぁ、自分でも馬鹿なことをしていると思う。たぶんこの日記詳しく全文読んでくれる人はほとんどいないんじゃないかとも思う。
少なくとも俺なら流し読みする。この文字数の日記を見たら、マウスのスクロールをちょっとずつ回転させながら目に付いた単語だけで大方の話を理解しようと試みる。
実際人の日記でそうしてる。ゴメン、皆。

さて、親指が疲れる文字数になってきた現在までおじいちゃんはずっと雑誌に目を落としている。
横目で見ている感じ、膝の上に雑誌を置いて雑誌に書いてあることを実践しようとしているようだ。
何かのハウツー本だろうか。その割には表紙が派手だった気がするが、その雑誌が何物かを判別するほどはっきりそちらを見る勇気は俺には無い。

できればおじいちゃんの動作から何がしたいのかを判断したいところだが、ラジオ体操の「腕を軽く振り体を左右にねじる運動」の大きくねじったところで止めた姿勢(多少やる気が無くてひじが曲がっているとなおよし)で静止されても何の動作だか判断しかねる。少なくとも俺にそんな体勢を要求されるスポーツの類の知識はない。
強いていうならゴルフが近いが、クラブを握っているフリにも見えない。どなたかそういった姿勢に心当たりがあればご一報願いたい。


あ、おじいちゃん立ち上がった。
そのまま上着を着て(さっきまでももひきだけだった)自転車にまたがり何処へと消えていった。
小説読んでいる俺も俺だが、一体何をしに来たのか。


誰もいなくなり、光る水面を見つめる俺はコントで滑った相方を見つめる芸人のような顔をしていた。

再び手を伸ばしたペットボトルはなんとも言えない生ぬるさだった。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://sangerhilsen.blog7.fc2.com/tb.php/199-78c68106
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。